【トークセッション】「これからの住まいの形」(1/3)

29104398_1852491338117443_3989838869238382592_o
The following two tabs change content below.

鈴木亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

こんにちは。新潟面白不動産の鈴木です。今回は物件の紹介ではなく、トークセッションのレポートです。

2018年3月13日(火)。私を含め4名で「これからの住まいの形」というテーマでトークセッションを行いました。

参加者は、建築士で今年4月から住宅設計事務所エスネルデザインを開業する柏崎市在住の村松悠一さん(32)、新潟市内の住宅会社で設計の仕事をしている小林紘大さん(30)、燕市在住のWEBデザイナー大橋賢太さん(34)、そして新潟面白不動産を運営している私鈴木亮平(34)の全員30代のメンバー。
29186237_1852491618117415_1419367463035863040_o このトークセッションで話し合ったことは、その名の通り「これからの住まいの形」

働き方や暮らし方、キャリア形成や価値観が大きく変化している今の時代において「35年ローンで家を買うって実際どうなの…?」「働き方が変わったら、住まい方も変わっていくのでは…?」「不動産購入は出口戦略もセットで考えた方がいいんじゃない…?」「それでも憧れる持ち家の魅力ってなんだろう…?

とさまざまな疑念が自然と湧いてきますし、果たしてそれを見て見ぬふりをしていていいのだろうか?と思ったことがこのトークセッションを行うことになったきっかけです。

そこで、家というテーマで各々の考えを真剣に話し合ってみました。

 

スピーカー紹介

29137040_1852491418117435_3930817995592433664_oまず1人目の村松悠一さん。1985年生まれの村松さんは柏崎市で育ち、大学卒業後、新潟県内のゼネコンの住宅部門の営業マンとして3年働いた後退社。学生時代からの夢だった世界一周旅行へと奥様と2人で旅立ちます。
1年2カ月の旅行を終え、設計事務所勤務を経て今年2018年4月に独立して設計事務所を開業予定。村松さんが住宅設計で大事にしているのは、性能とコストバランス。資産価値や快適さ・安全性を担保できる高い性能としながらも、コストは抑える。自分たちが送りたい暮らしを第一に考え、その費用を引いて残った予算を建築予算にするというのが村松さんの考え方です。

29133122_1852491508117426_462487777854881792_o

2人目の小林紘大さんは1987年生まれ。新潟市西区で育ち、大学卒業後は新潟市内の工務店で現場監理として経験を積み、数年前に現在の住宅会社に転職。営業兼設計を行っています。以前新潟面白不動産でも取り上げた「グリーンホームズ」というユニークなアパートで暮らしながら、コミュニティマネージャーとして住民同士が交流を楽しめるイベントを企画しています。また、各地で行われているまちづくり活動にも参加をするなど、社会的な活動にも力を注いでいます。
*関連記事:【新潟市中央区大島】バーベキューもパーティーもOK!新感覚の賃貸集合住宅

29136035_1852491404784103_1813403027084673024_o

3人目の大橋賢太さんは1983年生まれ。燕市で育ち、東京でWEBデザイナーとしていくつかのWEB系の会社でキャリアを重ね、現在はフリーランスとして活動。2011年の東日本大震災がきっかけで燕市にUターンし、現在は鹿児島県出身の奥様と1,200坪の庭がある貸家で野菜を育てながら暮らしています。音楽イベントが好きな大橋さんは、三条楽音祭という毎年9月に開催している野外フェスの実行委員長も務めており、地元の有志と共に地域を盛り上げています。大橋さん夫婦の暮らしは新潟面白不動産でも紹介していますので、そちらの記事も合わせてご覧ください。
*関連記事:【燕市中川】家庭菜園もできる!1,200坪の庭付き貸家

IMG_8843

4人目の私鈴木亮平(34)は、新潟県五泉市出身。大学卒業後、都内の出版社で編集者としてのキャリアをスタートし、2011年に新潟にUターン。新潟市内のメディア系企業で住宅情報誌の編集・営業を行っています。個人的な活動として新潟面白不動産などのWEBメディアを立ち上げ、独自の情報発信を行っています。

 

35年ローンを組んで買う「持ち家」は本当に必要?

ここからトークセッションのレポートをしていきますが、ちなみに今回会場に選んだのは三条市の商店街の中にある「TREE」という飲食店。
29177607_1852491311450779_7843823529152741376_oこちらはコワーキングスペースとしても開放されており、無料でカフェスペースや座敷が使えるという画期的な場所です。私たちは座敷を借りて、カフェで注文した飲み物を飲みながらコタツでトークセッションを始めました。

01B最初のお題は「35年ローンを組んで買う『持ち家』は本当に必要?」というもの。住宅業界で働く村松さん・小林さん、メディアの立場で住宅業界と関わっている私にとっては実に際どいテーマですが、あえて切り込んで行きます。

29187219_1852491544784089_8461810864247275520_o

村松:
この問いに対する僕の答えは△ですね。高度経済成長の頃と違い、今は収入が伸びにくいし、土地の価格も上がっていかない。35年ローンは経済が成長している時代の考え方だと思うんです。これからは持ち家にしても新築だけじゃなく、中古住宅を買ってリノベしたり、2世帯で住んだり、賃貸に住み続けたり、と収入やライフスタイルに合ったいろいろな選択肢を選ぶ時代だと思います。
新卒で入った会社では住宅を売る営業の仕事をしていましたが、経験を積むとともに「果たして新築住宅を建てることがすべてなのか」と自問するようになりました。旅行が好きなので、海外旅行は我慢せずに行きたいですし、そこから逆算して住宅の予算を考え、その予算にあった家を建てるのが理想ですね

大橋:
自分は×。不要です。持ち家に懐疑的なんですよ。ちょっと重い話になっちゃいますが、燕に帰ってくる前は首都圏でマンションを買って夫婦で住んでいて。市民農園を借りて野菜を育てながら暮らしていたんです。で、2011年に3.11の大地震で福島の原発事故が起きて。その後、自分たちの畑からも放射能が検出されたんです。それがきっかけでマンションは売却。一カ所に住み続けるのはリスクがとてつもなく大きいと思うようになりました。
それから、燕市に帰ってきて、福島からの避難者の方と会う機会があって話を聞いていたら、福島の持ち家のローンを払いながら新潟でも家賃を払って暮らしているということを話していて。持ち家のリスクについて考えさせられましたね。
とは言え、持ち家はいいなと思ったりもしますよ。ただこれまでと違って、これからは新築の持ち家というのが贅沢品になっていくんじゃないかと思いますね。これまで当たり前のように行われてきた「新築で家を建てる」っていう、これまでの常識が合わなくなってきてるんじゃないかなと。それに一方では空き家が増えていってる。朽ちていく家をどうするのか?その有効活用を考えることの方が大事なんじゃないかと

小林:
自分はこれに対する答えは〇です。たしかに村松さんと大橋さんが話していたように、新築のハードルは上がっているようには感じます。これまでの住宅購入のスキームが当てはまらなくなっているようにも思います。
ただ、住宅は自分のためだけでなく、何かあった時に家族に残してあげられる資産としての役割があるので、そこが一つの価値になるんじゃないかなと思います。

鈴木:
私は△ですね。仕事柄これまで400軒以上のお宅を取材してきましたが、やはり多くの人が新築の家にものすごく満足して幸せそうに暮らしているんです。それを実際に見聞きし、新築の持ち家は素晴らしいなと率直に感じますね。ただ、かつての終身雇用や年功序列が崩壊していて、企業や事業の寿命が短くなっている時代に35年ローンというのが長すぎるように思うんです。
そこで重要になってくるのがお金のリテラシー。自分でライフプランを作ってみて、人生でこれからどれくらいのお金が必要なのかをシミュレーションした上で、「住宅の予算はこれくらい」とか「頭金はこれくらい用意しなきゃだめだよね」と言ったことを誰もが考えなきゃまずいんじゃないかとは思います。そもそも子どもの頃から学校でお金のリテラシーについてもっと学べるようにするべきなんじゃないかと思いますね

大橋:
たしかに、お金、経済、政治、ビジネス…、もっと学校教育でするべきこと。あと、東南アジアの途上国に行ったりすると、質素な家でもみんなが楽しそうに住んでいるけど、昔の日本も同じ感じだったんじゃないかな。今は不便な環境に耐えられなくなったり、ちょっとの騒音でも近隣とギスギスするようになってしまってるのかも。

小林:
日本の木造アパートの性能の低さが、新築の持ち家への憧れに繋がっている
というのはありますよね。

村松:
今の新築の性能はどんどん上がっていってる。既存の賃貸との性能の差は広がっているでしょうね。

小林:
あと、住宅へのお金の掛け方についての話になるんですが、学校区にこだわる方がけっこう多いというのがあります。人気の学校区を選ぼうとすると、それによって地価の高い場所になってしまうことがありますが、あまりその選択はおすすめできないですね。お子さんがその学校に入る頃には校風は全然変わっている可能性があるからです。

村松:
ちなみに大橋さんは今後もずっと賃貸で暮らしていく感じですか?

大橋:
まだ分からないですね。ただ、日本中いつでも大きい災害に見舞われる可能性がある中で、35年ローンはリスクが大きい。3.11の時は本当に「なんて諸行無常なんだ!」と思いましたからね…。

 

まとめ

持ち家は性能面や快適さ、自分たち家族に合った暮らしが叶うという点でとてもいいものではありますが、時代が変わり「35年ローン」のリスクがかつてよりも大きなものになっています。日本人はお金の話をしないことが美徳のようなところがありますが、自分の人生や家族を守るためにもお金に関する知識を誰もが身に付けることが重要になりそうです。
また災害リスクについても、日本に住んでいる以上は無視できないこと。土地選びや、耐震性能・耐久性についてしっかりと考えることが将来のリスクヘッジになりそうです。

2P目につづく

The following two tabs change content below.

鈴木亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。