【トークセッション】「これからの住まいの形」(2/3)

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鈴木亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

*この記事は【トークセッション】「これからの住まいの形」の2/3P目の記事です。(1P目はこちら

02B2つ目のお題は「これからの働き方と住まいの在り方をどう考えるか?」。

29137040_1852491418117435_3930817995592433664_o村松:地元(柏崎)の話ですが、自分の周りでは二世帯で暮らす友人が増えています。幸せってなんだろうなと自分なりに考えた答えが「仲間や家族と一緒に楽しい時間を過ごすこと」なんですが、自分も去年息子が生まれて妻の両親と暮らしています。義両親も孫をいつでも見られるので笑顔でいられるし、すごくいいことだと思っています。
それから、毎年地元の仲間10家族で旅行に行くんですが、老後になってもそういう繋がり・コミュニティを持っていたいというのがありますね。そういう意味で持ち家というのは、その土地での繋がりを持つ上で重要だと思っています。
働き方についてですが、自分はこれから独立することで今日のトークセッションみたいな活動を色々とやっていきたいと思っています。おこがましいかもしれませんが、社会にいい影響を与えられる建築士になりたいと思っています。

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大橋:(村松さんの話)すごくよく分かる。(自分が実行委員長を務めている)三条楽音祭は仲間がいなければ実現できないからです。やはり、ローカルに根を張ることを考えると持ち家は大事でしょうね。地域の集会や飲み会などに参加すると、おっちゃんたちから「今住んでいる家を買ってしまったらいいんじゃない?」と言われることも多いですし。悩みますね…。
一方、働き方は今後どんどん変わっていくので、住まいをフリーアドレス的に持てた方がいいのではとも思っています。あと、自分たちが年をとっていった時、若い人が今よりもずっと足りなくなっていく。そういう社会ではお年寄りが集まれるシェアスペースみたいな場所が必要になっていくと思います。
…この「これからの働き方と住まいの在り方」っていうテーマは難しいですね。うまく答えられない(笑)。

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小林:家は求心的な存在で、仕事は逆に外にある、というのが今の家と仕事の関係ですが、これからはこの2つが融合したり変わったり、複数の仕事を持つパラレルワークが当たり前になっていくと思うんです。
そうすると、一カ所にある家に暮らすのではなく、多拠点で暮らすというのも普通のことになっていく可能性があると考えています。
それから、今までよりも「個人」そのものが重要になっていくと思いますし、「人生100年時代」と言われている中で、個人が学び続けなければいけなくなると思います。
仕事をする場所も住む場所もこれまでのように固定されるのではなく、もっと柔軟な「シェアスペース」という考え方が理に適っていくのかもしれませんね。

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鈴木:これからの働き方の話ですが、まずこれまでの業界の垣根が曖昧になっていくと思っています。例えば自分は2006年に新卒で出版社に入りましたが、当時はまだ編集者は雑誌や書籍などの紙媒体をつくることが仕事でした。今はコンテンツ制作というスキルをベースにしながらも、紙媒体だけでなくWEBの記事やプラットフォームづくりをしたり、クライアントの課題解決をしたりすることが仕事になっています。つまり、編集者と出版事業がかつてほど強く紐づかなくなっているということです。
そういうことは多くの業界で当てはまっていくでしょうし、そうなると今後人材が業界の垣根を超えて流動していくことが増えると思います。そんな時代において、流動的な働き方が合っている人にとっては、一つの場所に家を構えることでチャンスを諦めたり、家族が離れ離れになってしまうのは不幸なことなんじゃないかなと思うんです。もちろん誰もがそのような働き方になるわけではないので、あまり極端な話にするつもりはないですが。

村松:たしかに今自分は柏崎に住んでいますが、どこで仕事をするか?というのは分からないですね。地元で仕事をしたいという思いはありますが、新潟市の方から相談を頂くことが多いです。

大橋:あと、自分のようなWEB業界はどこででも働けるイメージを持たれがちなんですが、意外と場所には縛られますね。数年前に新潟に帰ってきた時、東京の仕事をリモートワークでやろうと思ったんですが、「顔が見えない相手と仕事をするのに抵抗がある」と言われたことがあって…。もちろんこれから今のスカイプ以上の仕組みができて変わっていくとは思いますが。

小林:あと、さっき自分は「多拠点」という話をしましたが、拠点があることで外との繋がりができるというのはあるので、定住する拠点というのは必要なのかもしれませんね。

大橋:もう少し現実的な話をすると、例えば新潟だと冬の大雪の日の通勤ってすごく時間が掛かって無駄だったりしますよね。オフィスと住まいをもっと融合させていった方がいい。

鈴木:確かにWiFiとパソコンがあれば仕事は会社以外の場所である程度できる職種も多い。今後家には住むという機能だけでなく、仕事をする機能も求められるかもしれないですね。

まとめ
このテーマはまとまりにくいテーマでした。地域との強い繋がりをつくるという意味では、持ち家を構えて地域に根を張るということが重要になりますが、新しい働き方や新しいキャリア形成の話になると、流動性や他拠点という考え方が重要になります。
シェアスペースやオフィス機能を持った家の増加など、新しい概念の住まいやオフィスがじわじわと広がっていくかもしれません。

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3つ目のテーマは「不動産の出口戦略について」。

村松アメリカでは住宅を買ってから価値を上げることができるので、後から売却益を出すこともできますが、日本は木造住宅の耐用年数が22年という税制の話だけでなく、高温多湿な気候+災害の影響である程度スクラップ&ビルドは宿命なのかもしれません。それでも、価値の下落を抑える工夫は重要だと僕は考えていますが、次の2点を大事にしたいと思っています。
1つ目は長期優良住宅にすること。特にリノベが重要だと思っています。中古住宅を売買する際の構造や断熱性に対する信頼度が変わってくるからです。
2つ目はコミュニティの価値を上げること。例えば団地があった時に景観の維持などで一定のガイドラインを設けることや、住人同士のイベントがあることなどが大事になると考えています。

大橋:以前首都圏で4~5年住んでいたマンションは、売却時の金額が購入時から100万円しか下がらなかったんです。首都圏だからだと思います。新潟では難しいかもしれませんね。
不動産の出口戦略っていうのは、これからの少子高齢化社会・人口減少社会においては難しいことだと思っています。長期優良住宅とは言え、人口が減っているので、それに伴って物件が余れば結局価値は下がっていくんじゃないかと思うから。
不動産は文字通り動かせないものなので、どちらかと言うと、いかにその土地のパワーダウンを抑えられるか?例えば、コミュニティのリビルドみたいなことが必要なのではと思います。

小林:その家族の要望が詰まった自由設計の注文住宅は特殊な物件なので、価値を維持して販売するというのは難しいと思います。一方、万人受けするようにつくられた建売住宅の方が売却はしやすいと思います。そもそものイニシャルコストも抑えやすいので、売却時の損失も少なくて済むと思いますし。土地やマンションは戸建てと比べて大きく価格が下がることが少ないので、こちらも損失は少ないと思います。
ただ、自分はそのような個々の物件よりも、エリア自体の価値の向上が重要と考えていて、それが出口戦略になると思っています。
「リノベーションまちづくり」という取り組みを行っている清水義次さんが提唱している「敷地に価値なし、エリアに価値あり」という言葉が好きなんですが、そのエリア価値の向上を不動産業者やビルダーがやっていかなければいけないと思います。

鈴木:編集者の視点になりますが、それぞれの中古住宅のユニークさや魅力を伝わるような記事にして、その物件に価値を感じてくれる人に情報提供できれば、意外と通常の相場よりも高く売れるんじゃないかと思っています。
不動産物件は工業製品などと違って一点物なので、そういう意味でも価値を持たせやすいんじゃないかと。そう思って実験的に始めたのが「新潟面白不動産」というサイトです。
中古住宅は老朽化や性能面での不安というのはありますが、違う視点で付加価値を持たせて、その価値が分かる人にそこそこの価格で売る、というのができるのではないかと思っています。

村松:先ほどの大橋さんの話になりますが、確かに人口減には抵抗できないのは事実ですね…。

大橋:さっきエリアの価値を上げるっていう話が出ましたが、不動産屋はエリアのことをもっと考えなきゃいけない。街のグランドレベルをどう良くしていくかとか。あとは、いろんな職業の人が連携してまちづくりチームを作るといいんじゃないかな。三条楽音祭も「エリアに価値あり」という考え方でやっているんですが、例えば新潟県出身で今東京に住んでいる人に、「こういう面白いイベントがあるんだったら戻ってきてもいいな」と思ってもらえたらいいなと。

まとめ

住宅を売却する時にいかに価値を落とさずに売り抜けられるか(=出口戦略)については、(認定を取得するなど)住宅の性能を正しく評価・表示することがポイントになります。しかし、人口減少で需給バランスが崩れた状態では、自ずと資産価値が下がってしまうもの。それを食い止めるには、個々の住宅ではなくエリアの価値を上げるまちづくりの考え方が今よりも重要になるということに全員が共感をしました。

(つづく)

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鈴木亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。